【コラム】時を超える指揮者──モドリッチがミランにもたらす“静かなる革命”

コラム

(画像:GettyImages)

リッチの成長を支える“生きた教材”

サムエル・リッチにとって、この1年は特別な時間になるだろう。
エンポリで頭角を現し、ミラン移籍を果たした23歳のボランチは、シーズン序盤こそベンチが続いている。
だが、それは単なる競争に負けているわけではない。

前にはモドリッチがいる。
この40歳の司令塔が作り出すテンポ、そして判断の速さは、若手が追いつけるものではない。
リッチは練習後、ほぼ毎日モドリッチに声をかけ、戦術の意図やポジショニングについて質問しているという。
クラブ関係者によれば、「まるで師弟関係のようだ」とさえ言われている。

リッチは試合に出られなくとも腐らず、学ぶことに集中している。
モドリッチの隣で過ごす1年が、彼のキャリアを変えることは間違いない。
いずれリッチがミランの中盤を支配するようになるとき、
そこにはモドリッチという“見えない影”が確かに存在する。

 

レジェンドがもたらした変化──走る、考える、戦う

ミランの選手たちは今、日常の中で変わり始めている。
モドリッチは誰よりも早くトレーニング場に現れ、誰よりも遅く去る。
練習中も黙々と動き、若手に声をかけ、チームのムードを自然と引き締める。

「彼の存在がチームを1段階上げてくれる」とアッレグリは語る。
その言葉どおり、モドリッチの加入後、ミランの試合運びには安定感が生まれた。
後方からのビルドアップ、プレス回避の判断、試合終盤の時間の使い方。
その全てに、クロアチア人の知恵が溶け込んでいる。

レオンやプリシック、ヒメネスといったアタッカーたちも恩恵を受けている。
モドリッチがボールを受けた瞬間、誰もが動き出す。
彼が“次にどこを見るか”を予測できるからだ。
まるで全員が、同じ譜面を読むように動く。
それは、まさに指揮者の存在がもたらすサッカーの美しさだ。

 

ヨーロッパが見ていなくても、ここにある輝き

今季のミランはチャンピオンズリーグに出場していない。
だが、モドリッチのプレーにはそんな現実など関係がない。
彼の眼差しの先にあるのは、常に次の勝利、そしてチームの成長だ。

サン・シーロでの試合、彼がピッチに立つたびにスタジアムは独特の静寂に包まれる。
ボールが彼の足元に渡れば、観客は息を潜める。
次の一手が、全てを変えることを知っているからだ。
たとえそれがパス一本でも、そこには哲学がある。
“正しいプレーを選ぶ”という信念。
それが、モドリッチがどんな環境でも輝き続ける理由だ。

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